11月8日から10日にかけて、マレーシアの首都クアラルンプールにある高級ホテル「Equatorial Kuala Lumpur(EQホテル)」にて、鳥取和牛1頭がさまざまな形で料理になり提供されました。
「鳥取和牛のコース料理~日本酒ペアリングディナー~」
今回、ご縁あって鳥取和牛を供給させていただいたのが、やまのおかげ屋です。弊社からは肉のカットを現地で指導する専門家と、肉料理をプロデュースしたハワイ店店長が2人で渡馬。イベント前の11月頭から1週間ほど滞在し、EQホテルのシェフたちと交流しながら事前に組み立てたメニューを形にしていきました。
今回も輸出を手伝っていただいたのが神戸市の食品輸出会社「EATOPIA」様です。過去2023年末にも、EQホテルに鳥取和牛を使用していただきました。そこから発展し、今回は鳥取和牛1頭をまるまる購入いただきました。
『1頭を使い切る難しさ』
創業して10年となる弊社にとっても、和牛1頭を余すことなく売り切る(使い切る)ことは難しく、肉屋の一番の難しさといえます。
今回、鳥取和牛を購入いただいたEQホテルは、クアラルンプールの中心部で創業から50年を数える5つ星ホテルです。提供するレストランは、EQホテル内にある日本食レストラン「Kampachi」と、同じKampachiブランドでホテル外にある2店舗、EQホテル内にあるカフェレストラン「Etoile」の合計4店舗です。
クアラルンプール中心に高くそびえる52階建ての高級ホテルEQ(写真右)
われわれのミッションは、高品質な鳥取和牛を無事届けることに加え、4店舗のシェフたちが1頭を使い切ることを支援することでした。事前にWhatsAppでグループを作って議論を重ねてきたとはいえ、現地での滞在1週間のわずかなうちに、言語や習慣の壁を越えて、日本とマレーシアのシェフ同士が交流しながら肉のカットを伝え、メニューを一緒に作り上げていくことは至難の業です。
われわれが滞在中、特に腐心したのが、セカンダリー以下の部位をどう料理にしていくか?でした。EQホテルでは、プライマリーカットといわれるサーロインやリブロース、ヒレはこれまでも様々な産地の牛肉を扱い料理にしてきました。高級ホテルなだけに、日本の黒毛和牛も様々なブランドを扱ってきたといいます。
しかし、いわゆるセカンダリーと呼ばれるランプやイチボ、ミスジ、肩サンカクなどをどのように処理して美味しい部分だけを取り出すか?それらをどのようにして料理にしていくか?ということは、まったく新しいチャレンジでした。当然、そういったことを彼らに伝える役割の人もこれまでは居ません。しかし彼らの中でも、この課題をクリアしていけばそこに利益の源泉が眠っているのでは?という思惑があります。
和牛の中でも、3分の1以上はスジが多くて普通にカットしただけでは硬くて食べられない部位です。ただでさえ原価の高い和牛の、こういう使いづらい部位をどのように付加価値を高めた料理にして他の部位と同じように使い切るのかについては創意工夫が必要となります。EQホテルのシェフたちと同じく、われわれも現地の食習慣がいまいち掴めていない中では手探りの部分が多くありました。
『日本、そして和牛の食文化を伝える』
和牛ほど細かい処理をする牛肉は世界中でも他に無いのでは?と、まだまだ輸出経験が浅いわれわれでも感じているほどです。日本では、和牛を多様な部位に分け、それぞれの部位に適した用途で料理にしていきます。
今回は、精肉販売とコースメニューの提供です。
精肉販売では、ステーキ、焼肉、串焼き、バーガーパティ、ソーセージの5種類で販売しました。日本では、このほかにしゃぶしゃぶ、すき焼き、切り落とし、煮込み用ブロックなどのカット方法があります。
コースメニューでは、ローストビーフ、タタキ、刺身、寿司、パテ、ステーキなどで肉づくしの料理を提供しました。
1階のカフェレストランでは、アラカルトでハンバーガーや焼肉、串焼きの料理提供もおこないました。
コースメニューを出すイベント前日、レストランのシェフとサービススタッフ全員が集まり、肉の特徴や料理の内容について、勉強会を開きました。この中で、鳥取和牛の歴史や特徴、鳥取県の観光地などについても紹介しました。
鳥取和牛は、第1回の和牛オリンピックでチャンピオンを獲得した「気高号」で一気にその存在感を示しました。しかしそれまでもその後も、山陰という地は江戸時代から子牛の生産が盛んで、良質な子牛を肥育が盛んなブランド産地に送ってきた経緯があります。肥育の技術が上がり、食肉の評価が高まってきたのがここ近年のことです。2017年に開催された第11回の和牛オリンピックでは、『肉質日本一』の栄誉を獲得しました。10年ほど前から、鳥取和牛の上位ブランド『鳥取和牛オレイン55』の認定を始め、霜降りの多さだけでなく“脂質の良さ”を数値により可視化するブランディングをおこなってきました。
※鳥取和牛オレイン55は、ロースの断面の脂肪酸を測定し、その中に占めるオレイン酸の数値が55%以上のものをブランド認定しているものです。オレイン酸は、悪玉コレステロールを抑え、血糖値を下げる役割を持つとされる不飽和脂肪酸の一種で、オリーブオイルや椿油の主成分です。
やまのおかげ屋が取り扱う鳥取和牛
日本の中でも決して認知度の高くない鳥取和牛ですが、肉質・脂質ともに品質の良さを知っていただくと、皆さんが前のめりで話を聞いていただけます。サービススタッフからお客様に自信を持って肉の良さを語っていただけるからこそ、価値を感じて食べていただけます。
『1頭を売り切るためのサポート』
1週間の滞在と3日間のイベントで、300㎏強の和牛1頭が売り切れたわけではありません。滞在中、カット後の棚卸をしつつ、シェフたちと各レストランにどの部位をどのくらい配置するかを考え、それらの調理法を表にまとめていきました。
帰国後、WhatsAppで現地シェフからは連日のように相談の電話がかかってきます。「この部位は何に使うのが良いか?」「この部位はどうカットすると美味しいか?」こうしたフォローアップをおこないながら、当初の目的であった1頭を使い切るというミッションが達成されようとしています。
われわれは、プライマリーカットやセカンダリーの正肉だけでなく、スジや脂の使い方も最後までシェフたちとともに考え、一緒にメニューを作り上げていきます。
『最後に』
われわれは鳥取和牛をはじめ、神戸牛、近江牛、佐賀牛、土佐あかうし、宮崎県産黒毛和牛、鹿児島県産黒毛和牛、兵庫県産黒毛和牛、高知県産黒毛和牛、島根県産黒毛和牛、広島県産黒毛和牛を日本以外の国に紹介しています。もし、日本の商社様、日本以外の国や地域のインポーターやディストリビューター、レストランの方々でご興味をお持ちの方がおられたらご連絡ください。
それぞれの産地の農場から直接お届けする形で提案させていただきます。
ご購入の相談は1頭まるまる買っていただくのが一番です。1頭あたり、カット方法にもよりますが300~350㎏の肉となります。
しかし、最初からそんなに多くの部位の仕入れは難しい、という場合もあると思いますのでその場合は相談に乗ります。ロースセット(サーロイン、リブロース)、ロインセット(ヒレ、サーロイン、リブロース)、上記に肩ロースを加えたセット、モモの中でもランプ、イチボなど非常に柔らかく上質な部位を組み合わせたセットもご提案可能です。
まずは、100~150㎏程度の取り扱いから考えてみられてはいかがでしょうか?
産地にこだわりがなく、とにかく日本の黒毛和牛を仕入れてみたいというご要望にもお応えしています。この場合、多いご注文では、「ロースセット500㎏と三角バラ350㎏が欲しい」、「ロインセットを3トン、半年に1回、船のコンテナで輸入したい」などの要望もあり、それぞれ相談に乗らせていただきます。
まずは1度お問い合わせください。オンラインMTGを組みましょう。日本語以外に、英語、中国語でも対応は可能ですのでご連絡ください。
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